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「男性保育士には娘の着替えをさせないでほしい」今一度問われる保育士の性差別問題とは?

「男性保育士には娘の着替えをさせないでほしい」今一度問われる保育士の性差別問題とは?

2016年は「保育園落ちた日本死ね」が流行語大賞にノミネートされるなど、大きな話題となりましたが、保育業界の2017年はこの言葉で幕開けとなりました。

「男性保育士には娘の着替えをさせないでほしい」

SNSをはじめ、インターネットでは様々な意見が飛び交っていますが、今回はそれらを少しずつ整理していき、保育士の立場で考えてみたいと思います。

千葉市の熊谷市長が男性保育士問題を取り上げた

事の発端は、千葉市の熊谷市長によるツイートでした。

女子児童の保護者による「うちの子を着替えさせないで」といった要望以外にも、市には男性保育士に関する問い合わせが、数件寄せられているとのことです。

こうした問い合わせは一部の保護者によるものですが、熊谷市長のツイートを見たユーザーの中には、保護者の考えに共感する声も多数聞かれました。

子供の羞恥心に対する配慮であり、女児の親御さんが望むのは当然のこと

性犯罪の加害者の9割が男性って事を考えたら、十分考慮する理由になる

日本はロリ大国だから未然に防ぐべきだ

男性保育士の差別は女性なら社会問題になる?

しかし、熊谷市長は続けて次のようなツイートも投稿しています。

女性の社会進出を推進する今の日本で、職場内でのジェンダー・ハラスメント(女らしさ・男らしさの圧力)セクシャル・ハラスメント(性的嫌がらせ)は、裁判が起きるほど大きな問題。

「女性だから」や「男性だから」を根拠なしにあてはめ、職務から除外する性差別は絶対にあってはならないと、熊谷市長は心から訴えています。

千葉市熊谷市長

子供の羞恥心を考えた保育が必要なのか?

着替え以外にも「おむつ交換や排泄のお世話だけは女性保育士に」といった要望もあります。その理由は、子供が異性に対して「恥ずかしい」と思う気持ち、つまり羞恥心が芽生えるからということです。

さらには「3歳児未満には性犯罪防止、3歳児以上は羞恥心の尊重」として、男性保育士による女児の着替え反対を訴える意見もありました。

しかしながら、発達過程にある子供には個人差があり、年齢で羞恥心の有無を判断することは難しいのが事実

仮に、子供の羞恥心を尊重して制度を見直すのであれば、小中高の身体測定はどうなるのでしょうか?小児科の男性医師による診断は?

どちらにしろ、保育業界にとどまらない問題へと発展しそうですね…。

子供の羞恥心を考えた保育が必要なのか?

介護業界でも同性介護問題はある

今回の男性保育士問題に似たようなケースは、介護業界でも頻繁に起きています。

老人ホームやデイサービスでは、高齢者の入浴や排泄を職員がサポートするのですが、やはり男性職員による介助を嫌がる女性高齢者も多く見られます。それは羞恥心からであったり、単純に男性が嫌いであったりと理由は様々。

また、本人の意思ではなく、ご家族から同性介護の要望を受けるケースも少なくありません。

保育園同様に介護業界も深刻な人手不足。「頼まれたらやるしかない」が暗黙のルールとなっていますが、職員の本心は「個人的な要望に応えている余裕はない!」の一言でしょう。

こういったイレギュラーな要望は、職員の負担を大きくし、結果的にサービスの質の低下に直結してしまうことも考えられます。

介護業界でも同性介護問題はある

保育のプロと思われていない?

保育士は、筆記試験と実技試験を受けて国家資格に合格している保育のプロです。親以上に子供のことを理解しているエキスパートです。

しかし、保育士の賃金が安いことや、待遇が悪いということで、どこか社会的に見下されているのではないでしょうか?

そういった気持ちがモンスターペアレントを生み出し、今回のような無理な要望へと繋がっているのかもしれません…。

事実、男性保育士による女児の保育に関しては、数年前から言われてきたこと。今になって問題となった背景には、ニュースや新聞で連日報道される保育士不足問題によって、保育士という職業のマイナスイメージが定着したからではないでしょうか?

保護者の考えを変える必要がある

都心部では待機児童が問題視される昨今。やっとの思いで入園が決まった親御さんは「子供を預かってもらっている」といった考えで、大切な我が子を保育士に託していることでしょう。

しかし、保育園は託児所と違います。発達過程にある子供に、多くのことを学んでもらう大切な場所でもあり、学校のような感覚で「子供を通わせている」といった考えの親御さんも少なくありません。

過保護になる気持ちは理解できますが、保育士が置かれた状況を理解してもらい、少しでも「子供を預かってもらっている」という気持ちを持ってもらいたいものです。

保護者の考えを変える必要がある

男性保育士の雇用が落ちる?

今回、男性保育士の問題が話題になったことで、ひとつ大きな懸念が生まれました。それは、男性保育士の採用率が低下するかもしれないということです

保育園などの雇側からしてみれば、今回のようなトラブルが自分たちの園で起きないよう、男性保育士ではなく女性保育士の採用を優先する流れになりかねません。

もしそうなれば、ますます男性保育士の数が減り、男性が活躍できない業界になってしまいます。

男性保育士を雇うメリットは以下の通りです。

  • 力や体力がある
  • 母子家庭の子供に父性を与えられる
  • 園外散歩で子供や職員を守ることができる
  • 遠足などで男児を男子トイレに連れて行ける
  • 女性が多い職場の雰囲気が良くなる

採用担当者は男性保育士のメリットを十分に理解して、間違った意見に流されないようにしなければなりません。

男性保育士を雇うメリット

保育そのものの見直しが必要なのか?

仮に「男性保育士による女児の着替えは禁止」となれば、保育業界全体に大きな改革が必要となります。

まず、児童用のトイレが男女共用となっている園は、男子トイレと女子トイレの両方を設置する必要があります

また、男児女児と同じ場所で着替えが全面禁止となり、パーテーションなどを活用しながら、男児は男性保育士が着替えを行い、女児は女性保育士が着替えを行うということを、新しい保育のルールにしなけばなりません。

さらには、お昼寝(午睡)の際にもパーテーションで男児と女児に分けるべきでしょう

といった感じで、園児に男女平等や羞恥心という言葉を当てはめると、こんな感じになります。とてもじゃありませんが、現実的ではありませんよね(笑)施設の改修費用以外に、女性保育士と同じ人数の男性保育士を集めなければならず、とてつもないコストがかかります。

しかし、男性保育士による女児の着替え問題は、こういった論議にも飛び火する内容なのです。

保育そのものの見直しが必要なのか?

保育士による子供の着替えには大切な役割がある

保育士は着替えを通じて傷や皮膚疾患などをチェックしています。虐待の形跡を早期に発見する上でも、子供の着替え場重要な仕事です。

また、排泄介助では便の臭いや形状から健康状態が分かるため、体調管理では欠かせません。

一時的であっても、着替えや排泄介助も、親代わりとなる保育士と子供の信頼関係を構築するための大切なコミュニケーション

それを「性犯罪」や「羞恥心」といった観点から問題定義をするのは、実に浅はかな意見であり、本質を見逃しています。

保育士による子供の着替えには大切な役割がある

千葉市の男性保育士活躍推進プラン

ただでさえ保育士が足りない昨今。女性の社会進出がスポットライトを浴びる陰で、肩身狭く働く男性保育士の現状を、熊谷市長は深刻に思ったに違いありません。

そうして新たに策定された「千葉市立保育所男性保育士活躍推進プラン」では、男性保育士が働きやすい職場環境の構築を義務付ける内容となっています。プランの要点を以下にまとめました。

千葉市立保育所男性保育士活躍推進プランの要点

  • 職場で男性保育士が孤立しないよう、本人の要望があれば男性保育士を2人以上配属する
  • 男性用トイレや更衣室、休憩室の設置を推進
  • 性差別に関わらない保育を実施することを保護者に理解を求め、周知する
  • 男性保育士の魅力を伝えていく機会を設ける

参照元:千葉市立保育所男性保育士活躍推進プラン

男性が少ない保育現場で、男性保育士の活躍を促すために策定したこのプラン。「質の高い保育サービス」と「職場環境の改善」の両面から見ても、男性保育士の役割を高めていくことは重要でしょう。

ホイクジョブに寄せられた保育士の意見

本記事の執筆にあたってホイクジョブでは、現役保育士を対象に「男性保育士には娘の着替えをさせないでほしい」問題に関する意見を募集しました。その中からいくつかご紹介します。

児童が狙われた犯罪が多い。男性保育士が逮捕されているニュースもあった。親御さんが過保護になる気持ちも分かる。でも、男性保育士だから危険という考えは間違いだと思う。ただ、これからは信頼してもらえるように努力するしかない。

「男性保育士だから犯罪する」という意見は「警察官だからワイロを受け取る」「政治家だから裏金で儲けている」に近いかな。結局は個人の問題だし、職業全体でそういった偏見はおかしい。

娘の着替えは~って個人的な要望を通したいなら、サービスが手厚い私立保育園に預ければいい。普通の保育園はカツカツなんだよ。

こういう問題をすべての男性保育士にあてはめ、さも犯罪予備軍であるかのような固定観念を持ってしまうことが一番怖い。男性保育士を真剣に目指す人間を色眼鏡で判断して、白い目で見て、排除し、夢を閉ざすようなことはあってはならない。真面目に働いている男性保育士が可哀想。

容疑者個人の問題と適性を問題視すべき。犯罪が起きた場合、男性保育士だからではなく、まずは園内での指導や管理不足を問題視すべきだ。

男性保育士が入社してから園の雰囲気が良くなったよ。男性保育士の配置を義務にすると、保育士の労働環境も改善されるんじゃない?

小児科にも男性医師がいるが、そういった場合も気にするのだろうか?保育士という職業だから?医者は特別?

次は「男性教師はいらない」にエスカレートしそう。

まとめ

保育士という呼び方に統一される前は、女性が「保母さん」に対して、男性は「保父さん」とも呼ばれていました。そんな男性保育士の割合は、全体の3~4%で約1万人ほどとなっています。

しかし、力仕事が多い保育園では男性保育士を必要としています

また、シングルマザーの家庭も増えており、父親の温かさを知らない子供に父性を与えることができる男性保育士が必要不可欠。女性が多い職場の雰囲気改善にも一役買っています

今回話題となった男性保育士の件は、保育業界全体としてマイナスイメージになりそうですが、男性保育士が働きやすい業界への第一歩として、千葉市の熊谷市長に続く自治体が生まれることを期待したものですね。

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